持たざるもの





「お前、アニメ好きって言う割にハマり具合が浅いよな」
「それはオタクとしてのダメ出しですか?」

 真顔で隣に振り向いて真剣に聞き返すと、ミルキはどうでもよさそうに本日3本目のコーラを開けていた。エンドロールが流れるディスプレイに、釈然としない顔の私が映っている。そもそも私はこの国でまだ地上波放映されていないジャポンのアニメ映画を観たくて彼と取引をしたりゴネたりした末にこうして部屋にまで押しかけているのだが、そういう熱意はあまり伝わっていないのだろうか。

「観たら満足してグッズ集めとかしないだろ」
「あーそっちか。なんかモノに執着できなくてさ」

 いうまでもなく、ミルキは造形物への執着が激しい蒐集家タイプだ。私にはない感覚だと常々思っていたが、彼の方も私の感覚はよくわからないのだろう。私たちは同じ穴の狢だが、似ているところはあまりない。

「ネタでもハンター目指してんなら、欲しいもののひとつやふたつねーとやってけねーぞ?って、十か条頭から抜けてたような世間知らずに言っても通じないか」
「全方位からダメ出しするじゃん。私だって欲しいものくらいあるよ」
「言ってみろよ」
「……情報とか……知識……経験……?」
「フワッとしすぎだろ」
「フワッとしてても実在します〜」
「実在するかどうかより、手に入れることに意味があるんだよ」
「所有欲ってやつ?」
「手に入れる快感は、形があるもんじゃないと得られないぜ」
「興味ないなあ」

 どうでもいい言い合いをしているうちに、エンドロールは終わってしまった。"向こう"にもあるタイトルだったので制作陣の名前まできちんと見ておきたかったのだが、今ここでそれに食いつくところを見られたくはない。またいずれデータを手に入れて確認することにしよう。

「つまらない奴だな、お前って」
「墓まで持って帰れなきゃ無いのと同じじゃん」
「墓から来たのかよ」
「言葉のあや」