みなおし




いつか死ぬいつか死ぬと心のどこかで思っていたのに全く死ぬ気配が無いので、俺はを少し見直していた。

一応話のわかる奴だし、邪魔くさいと思ったのは最初だけで、あとは本当に、時々いるんだかいないんだかわからなくなるくらい大人しくしている。地下深い修行場に一週間近く引き籠らされていても、それが軟禁であるという自覚すらないような平気な顔で「ねえあのアニメ続き見たい」とか言って部屋に来るし、あんまり構うと殺されるぞと忠告したのに、上手いこと距離を取ってキルアと遊んでいる。カルトの癇癪も痛い痛い言っているが、着実に力を付けているのはママが監視カメラで録画した映像だけでもわかった。

あいつは自分を一般人だの普通だのとほざいているが、多分完璧にそうだというわけではないだろう。身のこなしや話し方は突然思い出したように弱っちくなるが、そうじゃないときは足音も上手いこと抑えていると思うし、勘だって一般人と呼ぶには良すぎる。訓練を受けていなかっただけでそういう環境に居たんじゃないかと俺は思うのだが、は頑なに否定していた。どうしても一般家庭という名称に括られていたいらしい。埒が明かないからイル兄に聞いてみたりもしたが、「さあね」の一点張りでこっちも埒が明かなかった。

でもまあ、話の通じる相手がいるというのはなかなか悪くないので、無理して暴いて話を面倒くさくする気はない。社会的に存在しない人間であることは確定しているし、過去を探るのも容易ではないのだ。わからないと逆に知りたくなるのが人間の性だが、ただの時間の無駄であることも間々ある。

とりあえず今はよくわからないものとして割り切って、どこかでうっかり死ぬまで適当に楽しくやっていこうと思っている。中々しぶとい奴だから、放っておいても勝手に生き続けるだろう。