何を隠そう同じ穴の狢なわけだから





「ミルキ君って同い年なんですよね。よろしくお願いします。」
「・・・・あぁ」

最高にめんどくさそうな彼に挨拶をしつつ、事実私の倍ありそうな横幅をちらちらと見る。――何食ったらこうなるんだ。修行とかどうしたんだ。キルアとかカルト君と比べ・・・るなんてそんなこと私にはできない。
そんな私の心の葛藤を見抜いているのかいないのか、ミルキ君はふん、と不機嫌そうに背を向け、たった今しがた開けてくれたドアを閉めようとした。しかしそこは押し売りセールスマン根性を捻りだしてキルアに借りた靴をドアと壁の間にブチ込む。

「なっ!?お、お前何してんだよ!!」
「いやいやいやいや、ここはフレンドリーに行きましょうミルキさん、ね?」
「お前の行動の方がフレンドリーを冒涜してるだろ!」
「何をおっしゃる、友情の押し売りは嫌いですか?」
「嫌いだ!!」

自室のドアをギリギリギリと引っ張る彼に対抗し、頑丈な靴を頼りに肩まで捩じ込みつつ逆側へ全力で引き戻す。ミルキ君の顔には青筋が浮いているが、それが怒りによるものなのか無理をした結果なのかはわからない。しかし怒っているにせよ、それが兄貴のブリザードより怖くなければなんとかなるというのが私の持論である。私はまず最高の笑顔を浮かべ、捩じ込んだ左腕を握手を求める形にしてミルキ君につきつけた。

「私はただ同い年の君と握手をする程度の仲になりたいだけのいたいけな乙女です。カルト君さっそく怖いしなんていうか他にもいろいろ怖いものいっぱいあるのでできればちょっとでも友好的に関係を結びたいといいますか、味方、いや、せめて憐れんだような目でもいいので生温かく見守ってくれませんかほんとこの通りなんで」
「どの通りだ!誰がこんな押し売りセールスマンの味方になるかよ。」
「だってミルキ君以外見た目が既に怖いんだよ!?」
「キルアとカルトはそこまででもないだろ。」
「怖いよ!お人形さんかと思ったよ!!」
「その言い方ある意味俺を侮辱してるぞ!」

そうとも言うのかもしれない。しかしとりあえず「でもミルキ君、君だってちょっと痩せたらどえらいイケメンだよ〜」とぼそっと付け足してみると、ドアが軽くなった。これはもしやほにゃららも煽てればなんとやらというやつだろうか。

「・・・将来有望なミルキさんと、今ここで、握手!」
「・・・・・」

も、もうひと押し・・・のはずだ。こちらを見下ろすミルキ君の表情を窺いつつ視線を泳がせると、彼の壮大なコレクションのひとつと目が合った。見たことある、白いプラグスーツ。私ははっとして咳払いをする。

『・・・――ごめんなさい。こんな時、どんな顔をすればいいのか分からないの』

ミルキは呆けているように見えた。

「・・・・・・お前、わかってるじゃねーか。」

しっかと握り返された手を、待ってましたと強く握り返す。ひとまずお近づきのしるしに、そのよだれはお拭きなさいよと指摘しておいた。





(言わずと知れた綾波さんの名台詞。)