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美味しいごはん ゾルディック家は、当然と言っては何だが厨房の人もしっかり教育されているようで、ほぼ一流と言っていいようなレベルにおいしいごはんを出してくれる。好みじゃないかなとは思っても食べられないものはなく(途中から毒抜きだったし)タダで美味しいもの食べれるなんて幸せだなぁと(毒抜きになってからは)思ったものだ。 そこからの落差で闘技場周辺で買える適当な惣菜が美味しくないように感じたのか、単に日本の食のレベルが高いというのがこんなところに露見したのか、ともかく自炊しなければ安くて美味い飯にありつけない立場になったので、私は再び自炊生活に突入した。 ―――のは全然いいのだが、なんでイルミさんまでうちでごはん食べる流れになってるんだろう。 「・・・お口に合います?」 「うん、まあまあ。」 彼はそう言ったきり、煮物やら和え物やらの日持ちさせたり手間を省く気満々の料理を黙々と平らげて行く。 食べてもらえるのはもちろん嬉しいのだが、何かとてつもない違和感を感じるのは私だけではあるまい。この人ちゃんと食べるんだ、というのは今まで食卓をともにしていたため不適切な表現となってしまうが、気持ちとしてはだいたいそんな感じである。 もそもそと白米を咀嚼しながらお向かいの箸の運びを見守り、今の私の心情を二文字の漢字で適切に表すとするならば、とかなんとかとどうでもいい方向へ思考を迂回させて狼狽だけは回避する。ふと目を落とせば煮物は当初の半分近くまで減っていて、明日の朝ごはんへ持ち越す計画が早くも破綻の危機にあることを悟った。でも何だか悔しいので自分も負けじと突っついておく。我ながら美味である。 「、煮物上手だね。」 「ありがとうございます・・・?」 なぜか疑問形になった語尾が気になったのか、イルミさんは丁寧に「褒めてるんだけど」と注釈を入れてくださった。でもやっぱり私は疑問形でお礼を言うのだ。 |